午前中の「だるさ・眠気」、原因は朝食かも? 脳のパフォーマンスを持続させる「血糖値スパイク」を起こさない朝食の選び方
午前中、頭がぼんやりして集中できない。大切な会議や仕事中なのに、強い眠気やだるさに襲われる――。 その日のパフォーマンスを左右する不調は、もしかしたら「朝食に何を選んでいるか」が原因かもしれません。
例えば、手軽な朝食として定着している「グラノーラ」。これに含まれるオーツ麦(オートミール)が、なぜビジネスパーソンや健康を大事にする人たちに支持される科学的な理由をご存じでしょうか?
脳は、睡眠中であってもグルコース(ブドウ糖)を大量に消費し続けています。朝、目覚めた時の脳はエネルギーが枯渇した状態です。しかし、ここで単に「糖分」を補給すれば良いわけではありません。 鍵となるのは、「単純炭水化物」と「複合炭水化物」の違いを理解し、脳へエネルギーを安定供給することです。
1. 「単純炭水化物」と「複合炭水化物」の違い
炭水化物は、私たちの主要なエネルギー源ですが、その化学構造と体内での働きによって大きく2つに分類されます。
1-1. 単純炭水化物(Simple Carbohydrates):急激な燃焼
構造が単純で、消化・吸収が非常に速い炭水化物です。
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代表的な食品: 砂糖、果糖ブドウ糖液糖(ジュース)、精製された穀物(菓子パン、白米のおにぎり)など。
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特徴: 摂取後、瞬時にブドウ糖として血液中に取り込まれるため、即効性はありますが、持続性がありません。いわば「着火剤」のようなものです。
1-2. 複合炭水化物(Complex Carbohydrates):持続するエネルギー
多数の糖が結合した多糖類で、特に食物繊維を豊富に含む未精製の穀物を指します。
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代表的な食品: オーツ麦(オートミール)、玄米、全粒粉、雑豆類など。
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特徴: 消化酵素によって分解されるのに時間がかかるため、ブドウ糖がゆっくりと血液中に放出されます。こちらは「備長炭」のように、安定したエネルギーを長時間供給します。
2. 血糖値スパイクが午前中の集中力を奪う
「単純炭水化物」中心の朝食(菓子パンとコーヒーだけ、など)を摂ると、どうなるでしょうか。
血糖値が急上昇(スパイク)すると、体はそれを下げるためにホルモン「インスリン」を大量に分泌します。その結果、今度は血糖値が急降下し、脳へのエネルギー供給が不安定になります。これを「反応性低血糖」と呼び、以下の影響が懸念されます。
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認知パフォーマンスの低下: 文献などによると、高GI(高グリセミック・インデックス=単純炭水化物を多く含む)の食事を摂った学生において、授業中の居眠り頻度とグルコース値の変動に相関関係があることが示されています。
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意欲の減退: 血糖値の乱高下は、疲労感や「やる気が起きない」といった自覚症状を引き起こす要因となり得ます。
3. オーツ麦(複合炭水化物)が脳に最適な理由
私たちが目指すのは、脳にエネルギーを「安定的に・持続的に」供給することです。ここで、オーツ麦などの「複合炭水化物」が力を発揮します。
3-1. β-グルカンによるゲル化作用
オーツ麦は、代表的な複合炭水化物であり、水溶性食物繊維「β-グルカン」を豊富に含んでいます。
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ゲル化作用: β-グルカンは胃腸内で水分を吸収し、高い粘性を持つゲル状に変化します。
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消化吸収の遅延: この「粘り」が他の栄養素を包み込み、胃から腸への移動をゆっくりにします。その結果、血糖値の上昇が緩やかになり、インスリンの過剰分泌も抑えられます。
実際に、オーツ麦由来のβ-グルカンを含む食事を摂取することで、食後の血糖応答が穏やかになることが、複数の研究で示されています。
4. 「複合食」としての摂取が鍵
さらに効果を高めるためには、炭水化物単体ではなく、脂質やタンパク質を組み合わせる「複合食」としての摂取が推奨されます。
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良質な脂質の役割: ナッツ類などに含まれる脂質は、消化管ホルモンを介して胃の運動を穏やかにし、消化吸収のスピードをさらに緩やかにする働きがあります。
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理想的な組み合わせ: 「複合炭水化物(オーツ麦)」に「良質な脂質(ナッツ)」を組み合わせることは、午前中のパフォーマンス維持において理にかなった戦略と言えます。
結論:朝食は「脳への投資」
朝食は、単に空腹を満たすためだけのものではありません。その日一日の脳のパフォーマンスを決定づける、重要な「投資」です。
単純炭水化物による急激なエネルギーではなく、複合炭水化物による持続的なエネルギーを選択すること。 私たちは、オーツ麦やナッツをふんだんに使用した食品を通じて、皆様の「健やかで生産性の高い午前中」をサポートしたいと考えています。
参考文献・学術データ
Smalltreesのグラノーラバーがこだわる「低GI」「食物繊維」「食後の血糖コントロール」といったテーマについて、l-hubは以下の学術研究や公的データを参考に、科学的根拠に基づいた製品づくりと情報発信を行っています。
血糖値とGI(グライセミック・インデックス)に関する研究
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日本食生活学会(田中 照二): 「グライセミック・インデックス (Glycemic Index : GI) —その概念と臨床応用への期待—(PDF)」(2003年) ※食品ごとの血糖値の上昇度合いを示す「GI値」の概念と、健康管理への応用について解説された基礎文献です。
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永田 勝太郎 他: 「Flash Glucose Monitoring (FGM)時代の血糖値の分類 —低血糖・血糖値スパイクを中心に—(PDF)」(Comprehensive Medicine, 2020年) ※食後の急激な血糖値上昇(血糖値スパイク)に関する最新の分類と知見です。
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同志社大学(八木 雅之・米井 嘉一): 「糖化ストレスとアンチエイジング:食後の血糖コントロール(PDF)」(Glycative Stress Research, 2019年) ※食後の高血糖が引き起こす「糖化ストレス」と、老化(アンチエイジング)との関連性についての研究です。
大麦・食物繊維・素材の機能性について
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日本調理科学会(青江 誠一郎): 「穀類に含まれる食物繊維の特徴について(PDF)」(2016年) ※穀物由来の食物繊維が持つ特性と健康効果について詳述されています。
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日本食生活学会(青江 誠一郎): 「大麦β-グルカンの機能性について(PDF)」(2015年) ※Smalltreesのグラノーラにも含まれる「大麦」の水溶性食物繊維(β-グルカン)の機能に焦点を当てた研究です。
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日本食育学会(山本 純子 他): 「ゾル状水溶性グルコマンナンの血糖上昇抑制効果の検討(PDF)」(2023年)
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福山大学 生命工学部(石井 香代子 他): 「雑豆と食後血糖値との関連(PDF)」(2016年)
「食べる順番」や「食事スタイル」による健康効果
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日本糖尿病学会(金本 郁男 他): 「低 Glycemic Index 食の摂取順序の違いが食後血糖プロファイルに及ぼす影響(PDF)」(2010年) ※同じものを食べても「食べる順番」によって血糖値の上がり方が変わることを示した、ベジファースト等の根拠となる研究です。
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静岡県立大学大学院(若杉 悠佑): 「米飯を主食とする日本人の食後高血糖を抑制する食事摂取方法に関する研究」(博士学位論文, 2017年)
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日本糖尿病学会(永井 成美 他): 「朝食欠食・マクロニュートリエントバランスが若年健常者の食後血糖値等へ及ぼす影響(PDF)」(2005年) ※朝食を抜くことのリスクや、栄養バランスの重要性についての実証研究です。
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生活環境科学研究所(尾形・正木): 「午後の学習姿勢改善のための昼食の提案」(2019年) ※昼食の内容が、午後の眠気や集中力(学習姿勢)にどう影響するかを調査した研究です。









